2016年度のデータだと平均年収は13568231円のようです。 東京商工リサーチの情報本部情報部・坂田芳博課長を取材したところ、建設業100社の平均年収ランキングが判明した。 東京商工リサーチが今年7月に発表した「上場企業2,172社の平均年間給与調査」(2017年3月期)では、建設業が業種別で唯一700万円台を超えて、全産業で最も年収が高い業界とされたことは、各メディアもこぞって報道したから、知っている人も多いだろう。 では、建設業の中での、会社別の年収ランキングはどうなっているのか? 建設業界で働いている人であれば、「自分の会社の給料は高いのか?」「他社の給料はいくらなのか?」「仕事内容での給与の違いは?」といったデータは、ぜひとも知りたいところ。そこで東京商工リサーチを直撃し、建設会社の給与動向や、建設業100社の年収ランキングについて聞いて来た。 このデータは、2016年4月から2017年3月までの平均年間給与のほか、一部の建設会社では2016年1月〜12月の平均給与も加えたものである。 おおむね建設会社の決算は、4月から翌年3月までの通年決算のケースが多いが、歴史的経緯で1月から12月決算の建設会社もある。ただ、いずれにしても1年の通年決算であるため、平均年間給与の計算にあたえる影響はそれほど多くない。 あくまで上場会社が調査対象で、竹中工務店などの非上場会社は対象外。年齢が高ければ給与が高いのはある意味当然なので、平均年齢も参考にしてほしい。 スーパーゼネコンが年収ランキングのトップを独占すると想像していたが、トップは意外にも日揮。日揮は建設やエンジニアリング事業を手がけている会社だ。 2位はショーボンドホールディングス。ただ同社はホールディングス会社なので、従業員数も少なく、例外と言って良いだろう。だが、コンクリート構造物の総合メンテナンス企業であるショーボンドは、今後、国や地方公共団体の公共工事で維持補修業務を数多く受注すると予想され、株価もスーパーゼネコンより上位に位置するなど、兜町では健全会社であると予想されている。 3位は、これも予想外の大氣社。日本の設備工事業界は一般的にゼネコンよりも年収が低いと予測されていたが、建設業界にとどまらず、独自空調技術が強みのようだ。 4位からようやく、スーパーゼネコンが顔を出す。4位に清水建設、5位に大林組だが、6位には、なんと新潟を商圏とする福田組が顔を出す。7位の大成建設、8位の鹿島とスーパーゼネコンを抑えての高額給与である。9位はダイダン、10位がNIPPOだ。 まず建設業の平均年収が、全産業のトップに躍り出た理由について、東京商工リサーチの坂田課長はこう分析する。 「再開発などが活況を呈し、住宅やビル・道路等を建設する建設業界や、不動産業界の業績が好調なのに加えて、昨今の人手不足が原因で、各社が人手を確保するために給料を上げている傾向がある」 今後も建設業の高い給与水準が上がっていくのか気になるところだが、坂田課長の見立ては懐疑的だ。 「給料というのは、そう簡単に上げられません。大きく伸びていくよりも、徐々に伸びていく傾向にあると思います。急激の伸びはないでしょう。バランスを考えて、場合によっては賞与として還元するほうにウエイトを置くかも知れません」 企業にとって給料アップは、総合的な戦略の中の選択肢の一つであるとも、坂田課長は指摘する。 「企業は給料のことだけを考えるわけにはいきません。建設会社であれば、人への投資だけではなく、昨今話題の生産性向上をどうあげるか、そのための設備や技術開発をどう進めるかなど、網羅的に戦略を打ち立てていく必要があります。企業は成長しなければなりませんから、持続的な成長戦略のあり方が求められています」 長い間、「きつい」「汚い」「危険」の3Kと呼ばれてきた建設業のイメージが変わるような変革を期待したい。 すでにお気づきだと思うが、この建設企業別の平均年間給与ランキングと、ゼネコンの完工高・受注高ランキングは必ずしも一致していない。 たとえば、受注高ランキングが大体6位にランクインする準大手ゼネコンの戸田建設に至っては、年収ランキングが27位だ。13位の東急建設、15位の長谷工コーポレーション、19位の安藤・間、20位の前田建設工業、23位の奥村組、26位の東鉄工業よりも下である。 「ちょっと酷すぎはしないか?」と戸田建設OBに直撃すると、こう解説する。 「バブル時代に工事所長を担当したけれど、給料は安かった。戸田の給料が安いのは戸田創業家が陣頭指揮を執っていた時代からです。いまさら騒ぐことではありません。その代わり会社経営は健全で、社員の面倒をよく見てリストラをほとんどしませんでした。あの時、バブルに浮かれてイケイケどんどんで経営していたら、今ごろ、戸田は6位になっていなかったでしょうね。 だから、今だけ見て給料が高いから良い会社かと言えばそれは違うと思います。昔、戸田建設の労働組合にいて、他社よりもこんなに給料が安いのはひどいと、執行部を責めたことがありましたけれど、今、考えれば戸田の経営方針は正解だと思います。あの時、バブルに踊った会社の末路がどうなったと思いますか? だから初任給や今の給料だけを考えるより、生涯の保障があるしっかりとしたゼネコンを選ぶ方が正解だと思います。その意味で、戸田建設に入社して、卒業して、こうして楽隠居できたことは幸せだと思いますよ」 学校と病院建築に強い戸田建設。今は高層ビルも手がけているが、健全経営は創業家から今日に至るまでの伝統だそうだ。 そして、準大手上位であり、土木に強く、『釣りバカ日誌』の鈴木建設のモデルになった西松建設の年収は、なんと43位と低い。西松建設は受注高・完工高ランキングはおおよそ13位。「もっと高いと思った」というのが率直な感想だ。 西松建設の総務畑を歩んだOBにもインタビューしたところ、戸田建設OBと似たコメントが聞けた。 「給料は一度あげると下げるのが難しい。今よくても建設不況になった場合、給料をまた下げるには、それなりに大義名分が必要です。たとえば、リーマンショックのような事態であれば、みんな下げているからうちも下げようと言うことになりますが、そうでないと難しいです。 今の給料よりも長期の経営を考えた年間給与のあり方は戦略的に考える必要があります。今すぐ人員が必要だからといって、給料を一気に上げるのはどうかなと思います。人の囲い込みで給料を上げるという方法もありますが、働きにくい会社でしたら、人は辞めていくと思います。だからウチはウチ、ヨソはヨソの経営で年間給料を決めていくのが正解だと思います。 このランキングを見せられても、西松建設が格別に低いとも思わないですし、なんとも思わないとしか答えられません」 ゼネコン関係者を取材していると、給料の話は当然出てくるが、実際に働くとなると「給料がいい会社がいい会社か」と言えばそうではない。「給料が高くても働きにくい会社」もあり、「給料が低くて働きにくい会社」も少なくない。 建設会社を志望する就活生や転職を考えている建設技術者の皆さんには、この年収ランキングは一つの目安になるが、絶対視はして欲しくない。給料が比較的低い戸田建設、西松建設OBが声をそろえて「いい会社であり、卒業できて良かったと思う」と声をそろえて話していることに、ぜひ注目して欲しい。 給料を上げれば人が来る時代ではないと、坂田課長も指摘する。 「今はどこの業種でも人は不足しています。そして給料を上げたからといって人が来るわけでもありません。働き方改革の時代で、働きやすさも求められています。給与以上に、企業の魅力が大切で、他社との差別化も必要です」
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