解雇予告手当とは?算出方法と支払う必要がない場合

解雇予告手当とは何ですか?

解雇予告手当とは

雇用主は労働者を解雇する場合、原則として少なくとも30日前に予告するか、予告しない場合は30日分以上の平均賃金を支払わなければならない、とされています(解雇予告制度。労働基準法(以下「法」)20条)。そして、必要となる予告日数は、平均賃金1日分を支払った日数分だけ短縮することができます(同条2項)。この解雇予告の代わりに支払われる最低30日分の平均賃金のことを、解雇予告手当といいます。

解雇予告手当は、原則、解雇と同時に支払われなければならないとされています(S23.3.17基発第464号)。

解雇予告手当の算定方法

平均賃金とは

前述のように、解雇予告手当1日分は、平均賃金1日分ということになります。
計算方法は以下のとおりです(法12条1、2項)。

解雇予告手当1日分
=直前3カ月分の賃金の総額÷3カ月の暦の日数
※解雇予告日直前の賃金締切日からさかのぼって、直前3カ月分となります。

ただし、日給制・時給制・出来高払制その他請負制の場合、以下の金額を下回ってはならないとされています(同条1項1号)。

解雇予告手当1日分が下回ってはならない金額
=直前3カ月分の賃金の総額÷3カ月の間に労働した日数×60%

例えば、
日給制で、直前3カ月分の賃金の総額が23万円、暦の日数が92日、労働した日数が23日だった場合......

(1)解雇予告手当1日分
   =230,000(円)÷92(日)
   =2,500(円)

(2)解雇予告手当1日分が下回ってはならない金額
   =230,000(円)÷23(日)×60%
   =6,000(円)

この場合、(1)より(2)の方が高いので、平均賃金は6,000円となります。そこで、30 日分の解雇予告手当が必要な場合、その金額は以下のようになります。
6,000(円)×30(日)=180,000(円)

賃金の総額に含まれるもの

平均賃金の算出の基礎となる賃金の総額には、算定期間中に支払われる賃金の全てが含まれます(法11条)。また現実に支払われた賃金だけでなく、未払い賃金も含めて計算されます。平均賃金の算出には、期間中の以下の手当や補助なども含まれます。

  • 通勤手当
  • 精皆勤手当
  • 年次有給休暇の賃金
  • 通勤定期券代
  • 昼食料補助

など
ただし、以下については賃金の総額に含まれません(法12条4項)。

  • 臨時に支払われた賃金(結婚手当、私傷病手当、加療見舞金、退職金など)
  • 3カ月を超える期間ごとに支払われる賃金(例えば、夏季と冬季の年2回ボーナスが支給されている場合などは、これに含まれます)
  • 特別に法令や労働協約で定められていない現物給与

雇入れ後3カ月に満たない労働者の場合

このような場合は、雇入れ後の期間とその期間中の賃金で算定します(法12条6項)。

解雇予告手当を支払う必要がない場合

労働者が解雇予告制度の適用を受けない場合

以下の場合は解雇予告制度の適用を受けないため、解雇予告手当を支払う必要はありません(法21条)。

  • 日々雇い入れられる者で、雇用期間が1カ月以内である場合
  • 2カ月以内の期間を定めて使用される者で、雇用期間の延長、更新を行っていない場合
  • 季節的業務に4カ月以内の期間を定めて使用される者で、雇用期間の延長、更新を行っていない場合
  • 試用期間中の者で、雇用期間が14日以下である場合

解雇予告制度の適用がない場合

以下の場合は解雇予告制度の適用はありません(法20条1項但書)。

  • 天災事変その他やむを得ない理由のために、事業の継続が不可能な場合
  • 労働者の責任とすべき理由に基づいて解雇する場合であって、労働基準監督署長の認定を受けた場合

例えば、労働者に非があって、会社などで定めた懲戒事由に該当したことを理由として懲戒解雇する場合(「労働者の責任とすべき理由に基づいて解雇する場合」にあたると考えられます)であっても、労働基準監督署長の認定を受けない限り、解雇予告を行うか、または解雇予告手当を支払う必要があるということになります。

この記事の執筆者

勝浦敦嗣弁護士

勝浦 敦嗣弁護士

弁護士法人勝浦総合法律事務所 代表弁護士。東京大学法学部卒業、2001年弁護士登録。大手企業法務事務所、司法過疎地での公設事務所勤務を経て、現在、東京と大阪で弁護士11名が所属する勝浦総合法律事務所にて、労働事件を中心に取り扱う。

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