有給休暇の買取りについて

会社がお金を払って有給休暇を買い取ることはできるのでしょうか?

有給休暇の買取りは、基本的には、労働基準法39条違反であり、許されません(S30.11.30基収4718号)。
なぜなら、有給休暇の趣旨は、賃金はそのままに、労働者に休暇を取得させて心身の疲労を回復させる点にあるからです。有給休暇を買い上げてしまうと、労働者は休暇を取得し心身の疲労を回復することができなくなってしまいます。

有給休暇の買取りが許される場合

有給休暇の買取りは基本的には許されませんが、例外もあります。
まず、雇用する側が、労働基準法39条の日数を超えるような有給休暇を与えている場合、法定分を超える有給休暇の買取りをすることは、違法ではないとされています。

これは、労働基準法39条は、同条に定める日数の休暇を取得させて労働者の心身の疲労を回復させることが趣旨であり、同条の日数を超える有給休暇を買い取ったとしても、上記の趣旨に反するとはいえないからです。例えば、労働基準法上10日の有給休暇が認められる労働者に対して、雇用する側が12日の有給休暇を与えていた場合に、法定分を超える2日分について買い取ることは、違法ではありません。

次に、有給休暇を残したまま退職する労働者から買取りをする場合も、違法ではありません(聖心女子学院事件(神戸地判S29.3.19労民集5巻6号782頁))。退職後は、労働者が有給休暇の時季を指定する権利を行使することができないからです。

さらに、労働者が2年間有給休暇を使用せずに、時効となって消滅した分を買い取る場合も許されます。このような場合は、労働者は有給休暇をすでに取得することができなくなっているため、買い取ったとしても、労働者の有給休暇の取得を妨げることはないからです。
ただし、雇用主には、消化できない有給休暇を買い取る義務はないと考えられています(創栄コンサルタント事件(大阪地判H14.5.17労判828号14頁))。 また、雇用する側が有給休暇を買い取る場合の金額についての基準はなく、労働者と雇用主で話し合って決定することになります。

この記事の執筆者

勝浦敦嗣弁護士

勝浦 敦嗣弁護士

弁護士法人勝浦総合法律事務所 代表弁護士。東京大学法学部卒業、2001年弁護士登録。大手企業法務事務所、司法過疎地での公設事務所勤務を経て、現在、東京と大阪で弁護士11名が所属する勝浦総合法律事務所にて、労働事件を中心に取り扱う。

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