社員登用時の試用期間設定について

アルバイトからの社員登用に試用期間を設定することは可能ですか?

試用期間とは

試用期間とは、新たに従業員を雇う場合に、雇用前にはチェックしきれない能力や適性などを実際の勤務の中で確認し、一定の基準に満たない場合には、雇用主が雇用契約を解除することができるという制度です。
もちろん、試用期間中であっても、自由に解雇できるわけではありませんが、試用期間中ではない通常の時期の解雇に比べると、解雇がしやすくなっています。

試用期間は、通常よりも容易に解雇を認める例外的な制度ですが、実際に仕事を始めてみないと、その人の能力や適正が分からないということから、試用期間を設定することは許容されています。
しかし、試用期間を長期間定めたり、何度も延長するなどということは認められません。試用期間の趣旨に照らして必要な範囲を超える試用期間を安易に設定することは避けるべきです。

雇用途中の試用期間の設定

試用期間の趣旨から考えれば、すでに正式に雇用している従業員について、勤務の途中から試用期間を設定することは本来必要がないはずです。
このことはアルバイトから正社員への登用の場合も同様です。アルバイトを正社員に登用するということは、すでにアルバイトとしての能力や、適性を認めた上で登用しているはずであり、改めて、能力や適性を確認する試用期間を設定する必要は認めがたいでしょう。このような場合には、原則として、試用期間を設けることは認められないと考えるべきです。

ヒノヤタクシー事件判決(盛岡地裁H1.8.16)は、以下のとおり、このことを明確に指摘しています。

雇用の開始に当たり、試用期間を設けることは当然に許されることである。しかし、雇用が継続中に試用期間を設けることは、試用という文言それ自体の趣旨から、原則として許されないものと解すべきである。このことは、労働者の合意があっても同様である。ただ、タクシー運転手として雇用されていたものが一般の事務員となり、あるいはその逆の場合のように新たに雇用したと同視できるような例外的な場合に限り、雇用途中の試用期間の設定が許されるものというべきである。

アルバイトの時とは異なる職種や立場で正社員登用する場合など、試用期間を改めて設けることが許容される場合もありえます。その場合には、試用期間を設ける趣旨を明確にするとともに、試用期間中の解雇の条件を限定するなどとし、それを文書化しておきましょう。そうすることで、事後的に、試用期間の設定が有効であることを説明できるようにしておくのが望ましいでしょう。

この記事の執筆者

勝浦敦嗣弁護士

勝浦 敦嗣弁護士

弁護士法人勝浦総合法律事務所 代表弁護士。東京大学法学部卒業、2001年弁護士登録。大手企業法務事務所、司法過疎地での公設事務所勤務を経て、現在、東京と大阪で弁護士11名が所属する勝浦総合法律事務所にて、労働事件を中心に取り扱う。

<いつもと違うしごとも見てみませんか?>

覆面調査に関する求人(東京都)

求人をもっと見る

おすすめの社員クチコミを見てみよう

他の企業のクチコミを探す