トラックの運転手さんの労働基準法を知りたいのですが、教えてくださいｍ（＿ ＿）ｍ

旧労働省では、労働大臣告示「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」（改善基準告示）を策定し、随時改定を進めてきました。その最新版に従って説明します。 1、日勤労働者の拘束時間・休息期間の原則 ①1か月の拘束時間：293時間まで ②1日の拘束時間と休息期間：拘束時間13時間以内、最大16時間まで、休息期間は継続8時間以上 ③労使協定により月320時間まで延長可能 2、拘束時間・休息期間の計算 ①1か月間の各勤務の拘束時間をそのまま合計→1①以下であれば合法 ②始業時刻から起算した24時間以内の拘束時間→1②以下であれば合法 ③拘束時間が15時間を超える回数は、週に2回まで ④休日は、休息時間+24時間≧連続30時間とならなければならない ⑤時間外・休日労働は、1①又は1③の時間内であることを条件に可能 3、運転時間の限度 ①1日の運転時間は2日（始業から48時間）平均で9時間以内 ②1週間の運転時間は2週間ごとの平均で44時間以内 ③連続運転時間は4時間以内、4時間経過後は30分以上の休憩 この基準と質問文の内容から、違法性を検証していきます。 〇現状の拘束時間が4時半から20時、走行距離600km →1②の限度内ですから、拘束時間は基準に適合しています。ただ走行距離が長いので3の基準を超えている可能性があります。 〇夏場の拘束時間が4時から22時 →1②の限度を超えていますから、基準を満たしていません。違反です。 〇月の休みが3～4日 →労働基準法第35条2項により法定休日は4週4休以上と定められています。違反です。 〇残業手当は出ない →法定労働時間1日8時間、週40時間（同法第32条）を超える部分については時間外手当25％以上の支給が必要です。違反です。 〇昼の１時に終わっても、夜の８時まで会社で待機 →合間に事務の仕事をこなしている時間があればその時間は労働時間に該当します。この時間内に出発命令が出る可能性がなく、ただ翌日の連絡票待ちのためだけの待機であれば休息期間に該当します。 ただ、無駄に労働者を7時間も拘束する現状を考えると、翌日の荷物の連絡方法には改善の余地があるでしょう。 〇そういう事務関係の仕事って事務員のやる事ではないでしょうか →どのような内容かにもよりますが、書類整理程度であれば手待ちの者が従事しても問題はありません。ただ、これを義務付けると前述の通りその処理時間は労働時間に該当します。 以上のうち3点に明らかな違法性が、1点に違法性の疑いが確認できます。この他、有休の有無も怪しいところですね。有休は労働基準法第39条1項により、入社半年経過後に10日付与しなければならない労働者の権利です。 労働契約書、労働時間の詳細（運転時間・休息期間・事務処理時間等明確にしたもの）がわかる書面、給与明細等の証拠書類を持参して労働基準監督署に申告してください。彼への影響を考えて匿名で申告することもできますが、優先順位が下がり対応までに相当時間を要する場合があります。 申告により労働基準監督官が証拠書類を精査し、違法性が認められれば行政指導、また悪質な場合は司法警察官として責任者を検挙・送検します（労働基準法第102条）。 厚労省も昨今のトラック事故の多発に鑑み、トラック運転手の労働条件の改善に努めてはいますが、中小零細運送会社ではその指導を無視しているのが常態です。 彼が過酷な労働を耐え抜く活力はあなたの存在です。できる範囲で彼を支えてあげてください。