有給休暇とは? 雇用主の義務と違反による罰則

「有給休暇」や「有休」など、よく耳にしますが、具体的にはどういう意味でしょうか?

まず、「有給」と「休暇」に分けて考えてみましょう。

「有給」とは無給の反対語です。つまり、給料が発生するということを意味します。一方、「休暇」とは、労働者が労働をすることを免除された日を言います。労働をすべきところを免除されたという点がポイントで、そもそも労働する必要のない「休日」とは別の概念です。

この「有給」と「休暇」を合体させたのが「有給休暇」で、略して「有休」と言われたりしますが、つまり、「給料が発生する、労働が免除された日」という意味になります。

そして、有給休暇には、労働者の権利として法律で定められたものと、労働者と使用者との契約によって設けられるものとがあります。

契約によって設けられるものとしては、たとえば、「病気休暇」のように、一定の日数について病気を理由に休暇を取れる場合に給料が発生するものがあります。就業規則などで定めたり、個別の労働契約で定めるなどしますが、契約の中になければ、労働者はこうした有給休暇を取得することはできません。

他方、法律で労働者の権利として定められている有給休暇があります。法律では、これを年次有給休暇と呼んでいます。略して「年休」と呼ばれることもあります。なお、以下で「有給休暇」という場合は、この年次有給休暇を指します。

労働基準法(以下「労基法」)39条に定められているこの有給休暇は、使用者が労働者に対し、与えなければならないとされています。したがって、社長が「うちは有給休暇はやっていません」と言ったとしても、無意味であり、法律上、労働者に権利として発生します。就業規則や、労働契約書に「有給休暇はなし」と書き込んでもダメです。

有給休暇は、「雇入れの日から6カ月間継続勤務し、その間の全労働日の8割以上出勤した場合、1年ごとに、最低10日を付与しなければならない」とされています。取得できる有給休暇の日数は、勤務期間によって異なります。いわゆる正社員(雇用主と契約した労働日数が週5日以上、または契約した労働時間が1週間30時間以上)として働く労働者の場合は、次表のようになります。

継続勤務年数法定最低付与日数
0.5年 10日
1.5年 11日
2.5年 12日
3.5年 14日
4.5年 16日
5.5年 18日
6.5年以上 20日

他方、パート労働者やアルバイト(雇用主と契約した労働日数が週4日以下で、かつ、契約した労働時間が1週間30時間未満、または契約した年間労働日数が216日以下)の場合は、次の表のようになります。

所定労働
日数
1年間の
所定労働
日数
雇入れから起算した継続勤務年数(単位・年)
0.5年1.5年2.5年3.5年4.5年5.5年6.5年以上
4日 169~216日 7日 8日 9日 10日 12日 13日 15日
3日 121~168日 5日 6日 6日 8日 9日 10日 11日
2日 73~120日 3日 4日 4日 5日 6日 6日 7日
1日 48~72日 1日 2日 2日 2日 3日 3日 3日

そして、2018年改正労基法(2019年4月1日施行)によって、使用者は有給休暇が10日以上の労働者に対しては、5日の有給休暇を取得させる義務が課せられました。これは、使用者が「この日に年次有給休暇を取るように」と 、時季を指定するやり方となります。

もちろん、労働者が自主的に5日の有給休暇を消化すれば、使用者の義務はなくなりますが、これまで有休消化率が低かった職場やパート・アルバイト労働者が有給休暇を取っていなかった職場においては、影響の大きい法改正となります。

有給休暇の取得の単位

有給休暇を取る単位は「1労働日」が原則となっています。もともと、有給休暇はまとめて取って仕事から離れてリフレッシュする、という制度として始まりました。ところが、日本では、バカンスを有給休暇を取るという方向に発展せず、むしろ、病気で休む場合や病院に行くために有給休暇を取り、その月の賃金が減らないようにするという方向に発展しました。そのため、有給休暇を半日取るとか、時間単位で取るということを労働者側が求める傾向があります。

これについては、本来の有給休暇の趣旨とは異なるため、時間単位や半日単位での有給休暇取得は違法とされていました。しかしながら、上記の経緯から、労基法が改正され、労働者の過半数を組織する労働組合か、もしくは労働者代表との間で、労働者の範囲や日数などを明記した労使協定を結べば、5日分までは時間単位で取ることができるようになりました。

有休取得妨害と時季変更権

当然のことですが、使用者は労働者が有給休暇を取ることを妨害してはなりません。労働者の希望する時季に休暇が実現するようにしなければなりません。

もし、使用者が有休取得妨害など、労基法の義務に反した場合、罰則(6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金)があります。また、使用者が有給休暇日の給料を支払わなかった場合でも、労働者は、使用者に給料相当額の請求ができます。さらに、もし裁判になったとき、労働者が請求すれば、裁判所は、使用者が支払わなければならなかった給料相当額に加えて、それと同額の付加金の支払いを命じることができます。

有給休暇を取りやすい職場に

日本は、有給休暇の取得率が低いことがしばしば問題となります。労働者が権利を行使しないと使えないという構造であることや、日本特有の「みんなが働いているときに休むことへの罪悪感」などから、なかなか取得率の改善が進みません。そのため、2019年4月1日から施行される法律で、5日間の取得を義務化したほどです。もっとも、海外では、有給休暇を取得させることを労働者の権利ではなく使用者の義務としている国もありますが、そうした国では、そもそも「取得率」などという考え方すらありません。

日本の場合は、そうならず、権利と義務が混在することになりましたが、取得率の向上には、職場における「有給休暇を取りにくい雰囲気」を打破していくことが必要です。労働者も使用者も、有給休暇を取りやすい職場環境をつくっていくという意識が必要ですね。

この記事の執筆者

佐々木亮弁護士

佐々木 亮弁護士

東京弁護士会弁護士。旬報法律事務所所属。日本労働弁護団常任幹事。ブラック企業被害対策弁護団代表。ブラック企業大賞実行委員。首都圏青年ユニオン顧問弁護団。民事事件を中心に取り扱う。また、労働事件は労働者側・労働組合側の立場で事件を取り扱う。

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