内定期間中の研修費用・賃金について

内定期間中に参加必須の研修にかかる賃金や費用は誰が負担すべきですか?

参加必須の研修

内定者に対して入社前研修を義務付けた場合、その研修の費用については、誰が負担すべきなのでしょうか。入社前の内定者は、会社との間で雇用契約を結んではいません。そこで、入社前研修の費用負担については労働基準法上のルールは適用されないのが原則です。

したがって、研修の費用負担については、会社と内定者の合意に従って処理されることとなります。もっとも、入社に必要な研修を義務付けておきながら、その費用を内定者に負担させるというのは社会的に不自然ですし、ブラック企業であるとの非難を受けかねませんので、通常は会社が負担しているでしょう。

では、義務研修については、内定者に対して給料を支払う必要はあるのでしょうか。
この点についても、内定者と会社との間でまだ雇用契約は成立していない段階ですので、給与の支払義務は生じません。
しかし、

  • 研修の内容が業務に直結するかどうか
  • 社内での研修か外部講師による研修か
  • 勤務開始直前の研修か相当前の研修なのか

などの事情によっては、実質的に研修の段階でもすでに内定者と会社の雇用契約は成立しており、給与の支払義務が生じるということもありえます(後述の宣伝会議事件では、直前研修内容からすれば、直前研修は労働に該当し、賃金の支払が必要であると判断されています)。

研修を義務化させたうえで、その費用を内定者に負担させて手当も支払わない場合、内定者のモチベーションは下がるでしょう。また、万が一内定取り消しを行わなければならなくなった場合に、内定期間中に内定者に重い負担を負わせていたという事実は、内定取り消しの有効性を下げる事情となりかねません。

研修手当などの名目で、せめて、最低賃金相当の手当を支給することが望ましいと思われます。

研修不参加による内定取消

なお、内定者への研修を義務付けたにもかかわらず、研修に参加しなかった内定者について、そのことを理由に内定取り消しができるわけではありません。

内定取消ができるのは、「採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実であって、これを理由として採用内定を取消すことが、解約権留保の趣旨、目的に照らして、客観的に合理的に認められ社会通念上相当として是認することができるものに限られる」とされています(大日本印刷事件(最二判S54.7.20民集33巻5号582頁))。

そして、宣伝会議事件(東京地裁平成17.1.28)では、裁判所は大学院生が研究や卒論の作成に支障が生じるとして、入社前研修の一部に参加しなかった内定者に対する内定取消について、公序良俗に反して違法であると判断しています。

この記事の執筆者

勝浦敦嗣弁護士

勝浦 敦嗣弁護士

弁護士法人勝浦総合法律事務所 代表弁護士。東京大学法学部卒業、2001年弁護士登録。大手企業法務事務所、司法過疎地での公設事務所勤務を経て、現在、東京と大阪で弁護士11名が所属する勝浦総合法律事務所にて、労働事件を中心に取り扱う。

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