退職届・退職願の受け取り拒否について

退職届を受理してもらえません。どうしたらいいのでしょうか?

雇用者に辞職の意思表示をしてこれが到達すれば、一定期間の経過により、労働契約を終了させることができます。この時、後で証明できるような形で意思表示をすることが重要です。

退職届と退職願の違い「辞職と合意解約」

退職の申し出には、
(1)労働契約の一方的な解約の意思であるもの(辞職の意思表示)
(2)雇用者との合意によって労働契約を解約しようとするもの(合意解約の申込み)
があります。

一般的には、退職届(「退職いたします。」などの形式のもの)は、一方的な解約で(1)にあたり、退職願(「退職いたしたく、ここにお願い申し上げます。」など、お願いするという形式のもの)は、雇用者側の受理・承諾(雇用者との合意)を求めるもので(2)にあたると考えられます。
もっとも、実際には、必ずしも(1)か(2)のいずれかが明らかでない場合もあります。その場合の判断方法については、下記で解説します。

退職の申し出が(1)にあたる場合、これが雇用者に到達すれば、雇用者の受理・承諾がなくとも、一定期間の経過により、退職の効果が生じます。詳しくは後述します。
他方、退職の申し出が(2)にあたる場合には、雇用者との合意が必要となりますから、これを雇用者に受理・承諾してもらわなければ、退職の効果は生じません。

辞職の意思表示か合意解約の申込みかの判断方法

労働者からの退職の申し出が、(1)か(2)のいずれであるかは、労働者の意思や態度を含め、事実関係によって決まります。
この点について、辞職の意思表示は、生活の基盤たる従業員の地位を直ちに失わせる旨の意思表示であるので、その認定は慎重に行うべきであるとして、雇用者の態度にかかわらず、確かに労働契約を終了させる旨の意思が客観的に明らかな場合のみを辞職の意思表示と解釈し、そうでない場合には合意解約の申込みと解釈すべきとする裁判例もあります(株式会社大通事件(大阪地判H10.7.17労判750号79頁)、全自交広島タクシー支部事件(広島地判S60.4.25労判487号81頁)など)。

退職届から退職日までの期間のルール

期間の定めのない労働契約の場合、原則として、労働者の辞職の意思表示後、2週間の経過によって退職の効果が生ずることになります(627条1項)。

ただし、期間によって報酬を定めた場合は、賃金計算期間の次期以後について解約を申し入れることができ、かつ、その申し入れは、その期の前半にしなければならないとされています(同条2項)。そのため、例えば、純然たる(遅刻、欠勤があっても賃金が控除されない)月給制の場合には、1月の前半に退職届を出せば、1月末で退職することができますが、後半に退職届を出すと翌月末までは退職できないということになります。
また、6カ月以上の期間によって報酬を決めた場合、例えば年俸制の場合は、3カ月前に解約の申し入れをしなければなりません(同条3項)。

なお、627条の定める上記の期間は、雇用者のために延長することはできません(高野メリヤス事件(東京地判S51.10.29時報841号102頁))。したがって、雇用者が、同条よりも長い期間を就業規則で定めたとしても、労働者はそれに拘束されず、同条の期間の満了によって、労働契約は終了します。

退職届を受理してもらえない場合

期間の定めのない労働契約の場合、原則として、労働者は、いつでも辞職の意思表示ができます(民法627条1項)。そして、前述の通り、辞職の意思表示が雇用者に到達してから同条の期間が経過すると、労働契約は終了します。

したがって、雇用者に退職届を受理してもらえない場合であっても、別の形で雇用者に辞職の意思表示をして、労働契約を終了させることができます。この時、後で争いになった際に、辞職の意思表示が雇用者に到達したことを証明できる形で行うことが重要です。例えば、内容証明郵便やメールを送る、録音しながら口頭で伝える、という方法などが考えられます。

この記事の執筆者

勝浦敦嗣弁護士

勝浦 敦嗣弁護士

弁護士法人勝浦総合法律事務所 代表弁護士。東京大学法学部卒業、2001年弁護士登録。大手企業法務事務所、司法過疎地での公設事務所勤務を経て、現在、東京と大阪で弁護士11名が所属する勝浦総合法律事務所にて、労働事件を中心に取り扱う。

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