復職時に給与が減額されていた場合の対処法は?

復職時に給与が減額されていたらどうする?

給与の減額は勝手にできない

復職をするというのは、様々な場合があると思います。たとえば、業務上の病気や私傷病で休職しているようなときに病気が治って復職する場合、産休・育休から職場復帰する場合、介護休職から復帰する場合、解雇されたけれども解雇が無効で復職する場合などが考えられます。

いずれの場合でも、使用者は労働者の給与を勝手に下げることはできません。

給与の金額は労働契約により定まっている

給与の額は、労働契約で決まっています。これは、たとえ労働契約書を作っていなくても変わりはありません(労働契約書を作っていないこと自体は違法です)。労働契約も契約ですので、一方の当事者が勝手にその内容を変えるわけにはいきません。その内容を変えるには当事者が合意するか、もしくは法律や契約の中にその内容を変える理由が書いてあり、その理由が実際に存在するときだけです。特に労働契約では、給与の額は一番重要なものとされています。労働者が生活していくのに一番大事なものだからです。

したがって、使用者が労働者の同意も得ずに勝手に給与の額を下げるというのは、あってはならないことです。このことは労働契約法にも書いてあります。

復職の場合も同じ

復職の場合も同じです。給与を復職前の額より下げることは、原則としてできません。ただ、給与を下げることに労働者が真意から同意している場合は例外です。また、就業規則を変更することで下げる場合も、適法となる場合があります。このあたりの判断はケースバイケースとなります。

私傷病で後遺障害があるような場合

問題となりうるのは、病気で休んでいた労働者が復職するに際し後遺障害などが残っており、休職前と同じようには働けないという場合です。業務上の理由による病気であれば、これは後遺障害に対する損害賠償で損失が埋められることになるのですが、問題は私傷病の場合です。

私傷病は労働者に原因がある病気のため、会社がその損失を埋める理由がありません。そのため、前と同じだけ働けないことを理由に給与を下げようとしてくることがあります(場合によっては復職を認めないこともありますが、それは別の話のため割愛します)。ただ、この場合であっても労働者の同意が原則として必要です。同意なく給与を下げる場合には、労働契約や就業規則などに根拠が必要となります。なんの予告もなく勝手に下げることは違法となる可能性があります。

この記事の執筆者

佐々木亮弁護士

佐々木 亮弁護士

東京弁護士会弁護士。旬報法律事務所所属。日本労働弁護団常任幹事。ブラック企業被害対策弁護団代表。ブラック企業大賞実行委員。首都圏青年ユニオン顧問弁護団。民事事件を中心に取り扱う。また、労働事件は労働者側・労働組合側の立場で事件を取り扱う。

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