最低賃金の種類と対象について

最低賃金とはどのようなルールですか?

最低賃金とは

最低賃金とは、最低賃金法(以下「法」)に基づき、雇用主が労働者に支払う賃金の最低額として、国が定めたものです。最低賃金は、時間によって定められており(法3条)、都道府県ごとに定められた「地域別最低賃金」と、特定の産業に従事する労働者を対象に定められた「特定(産業別)最低賃金」の二種類があります。最低賃金については、毎年審議が行われており、その都度見直される可能性があります。

雇用主は、最低賃金の適用を受ける労働者に対して、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければなりません(法4条1項)。また、雇用主は、最低賃金の適用を受ける労働者の範囲と、これらの労働者に関係する最低賃金額、算入しない賃金、さらには効力が発生する年月日を、つねに作業場の見やすい場所に掲示するなどの方法により、広く知らせなければならないとされています(法8条)。

最低賃金の種類

地域別最低賃金

地域別最低賃金は、地域によって物価や労働者の賃金などが異なることから、地域ごとの実情を踏まえて決定されています(法9条2項)。
これは、雇用形態や職種にかかわりなく、各都道府県内の事業場で働く全ての労働者とその雇用主に対して適用されます。

なお、一般の労働者より著しく労働能力が低いなどの場合に、最低賃金を一律に適用すると、かえって雇用機会を狭めるおそれがあることなどから、以下の労働者については、雇用主が都道府県労働局長の許可を受けることを条件に、個別に最低賃金を減額する特例が認められています(法7条、最低賃金法施行規則(以下「則」)3、4、5条)。

  • 精神または身体の障害により著しく労働能力の低い方
  • 試用期間中の方
  • 基礎的な技能などを内容とする認定職業訓練を受けている方のうち、厚生労働省令で定める方
  • 軽易な業務に従事する方
  • 断続的な労働に従事する方

特定(産業別)最低賃金

特定(産業別)最低賃金は、関係する労働者・雇用主の申し出に基づき、最低賃金審議会が地域別最低賃金よりも金額水準の高い最低賃金を定めることが必要と認めた特定の産業について、設定されています。

これは、特定の産業の基幹的労働者とその雇用主に対して適用されます。18歳未満または65歳以上の方、雇用後一定期間未満の技能習得中の方、その他該当する産業に特有の軽易な業務に従事する方などには適用されません。

地域別最低賃金と特定(産業別)最低賃金が同時に適用される労働者には、高い方の最低賃金額以上の賃金を支払わなければなりません(法6条)。
なお、派遣労働者については、派遣先の最低賃金が適用されます。

対象となる賃金

最低賃金の対象となるのは、労働者に支払われる賃金のうち、毎月支払われる基本的な賃金です。
そこで、最低賃金を計算する場合には、実際に支払われる賃金から、以下の賃金を除外したものを対象とすることになります(法4条3項、則1条1項、2項)。

  • 臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
  • 1カ月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
  • 所定の労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金(時間外割増賃金など)
  • 所定の労働日以外の労働に対して支払われる賃金(休日割増賃金など)
  • 午後10時から午前5時までの間の労働に対して支払われる賃金のうち、通常の労働時間の賃金の計算額を超える部分(深夜割増賃金など)
  • 精皆勤手当、通勤手当及び家族手当

最低賃金法に違反した場合

仮に、最低賃金額より低い賃金で契約したとしても、無効となり、最低賃金額と同様の定めをしたものとみなされます(法4条2項)。

そして、雇用主が、労働者に対し、最低賃金未満の賃金しか支払っていない場合、雇用主は、その差額を支払わなくてはなりません。このとき、雇用主は、地域別最低賃金額以上の賃金額を支払わない場合には、50万円以下の罰金(法40条)、特定(産業別)最低賃金額以上の賃金額を支払わない場合には、30万円以下の罰金に処せられます(労働基準法120条、24条)。この他、最低賃金の周知義務(法8条)に反した場合、雇用主は、30万円以下の罰金に処せられます(法41条1号)。

この記事の執筆者

勝浦敦嗣弁護士

勝浦 敦嗣弁護士

弁護士法人勝浦総合法律事務所 代表弁護士。東京大学法学部卒業、2001年弁護士登録。大手企業法務事務所、司法過疎地での公設事務所勤務を経て、現在、東京と大阪で弁護士11名が所属する勝浦総合法律事務所にて、労働事件を中心に取り扱う。

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