労災保険とは?労災加入の例外と労災給付の争点について

労災保険とはどういう制度ですか?

労災保険とは、仕事中や通勤途中の事故でケガをしたり、業務が原因で病気になったりした場合に労働者や遺族に保障を行う制度です。 一人でも従業員を雇う者は、労災保険に加入する義務を負います。

労災加入の例外

例外的に、以下に該当する小規模な農林水産業などについては加入は任意となっています。

  • 労働者数5人未満の個人経営の農業であって、特定の危険または有害な作業を主として行う事業以外のもの
  • 労働者を常時は使用するがことなく、かつ、年間使用延労働者数が300人未満の個人経営の林業
  • 労働者数5人未満の個人経営の畜産、養蚕または水産(総トン数5トン未満の漁船による事業など)の事業

アルバイト、パート社員であっても労災の対象となります。他方で、個人事業主、会社の役員、事業主と同居する親族などについては、労災保険は適用されません。ただ、これらの者であっても一定の要件のもとに特別加入が可能です。

ところで、毎月の給与明細を見ても、労災保険料が控除されていることはないはずです。労災保険は、雇用保険や健康保険と異なり、保険料は全て雇用者が支払うこととなっているので、給料から引かれることはありません。

労災保険はどういうときに給付がなされるのか

「業務上の事由又は通勤による労働者の負傷、疾病、障害又は死亡等」(労働者災害補償保険法1条)が対象となります。
仕事中の事故だけでなく、通勤中の交通事故なども労災(通勤災害)に該当しますので、労災給付が受けられます。

もっとも、通勤中の災害といえるかどうかは争点になる場合があります。通勤とは、合理的な経路と方法によって行われる住居から就業場所への移動のこととされるので、通常の通勤経路を大きく外れた場合や帰宅途中で飲み屋に立ち寄った場合などは、通勤災害にあたらなくなります。

労災給付の争点

業務上の事故であるかどうかが争われる例もあります。ある最高裁の判例では、同僚の歓送迎会後の帰社中の事故について、労災に該当すると判断しました。
このケースは、労働者が、業務を一時中断して社外で行われた研修生の歓送迎会に途中から参加した後、業務を再開するため自動車を運転して会社に戻る際に、研修生を自宅まで送る途上で発生した交通事故により亡くなった事案です。歓送迎会への参加が半ば強制であった(一度参加を断っても再度参加を強く要請された)こと、その費用も会社が負担するものであったことなどから考えて、労災に当たるという判断がなされています(最高裁H28.7.8 集民 第253号47頁)。

この記事の執筆者

勝浦敦嗣弁護士

勝浦 敦嗣弁護士

弁護士法人勝浦総合法律事務所 代表弁護士。東京大学法学部卒業、2001年弁護士登録。大手企業法務事務所、司法過疎地での公設事務所勤務を経て、現在、東京と大阪で弁護士11名が所属する勝浦総合法律事務所にて、労働事件を中心に取り扱う。

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