CTCさんはSIerなので、顧客企業とSES契約を結ぶことはよくあるでしょう。 それ以前に質問者様はSESの意味を勘違いされていると思いますので、以下をお読みください。 ---------------------- 大手ソフト開発会社は、自社で開発した製品を直接不特定多数のエンドユーザーに販売提供することも有りますが、特定の顧客向けにワンオフ開発することも多いです。 ワンオフ開発の場合、持ち帰って自社で作業する場合と、顧客社屋内で作業する場合の2つが有ります。 さらに、顧客社屋内で開発する場合、顧客と大手開発企業との契約形態は、主に3種類有ります ・派遣契約:顧客から直接作業指示を受ける契約。顧客への成果物の納品は無い。 ・準委任契約:作業内容には裁量権が有るため、顧客から直接作業指示は受けない契約。顧客への成果物の納品は無い。 ・請負契約:成果物の完成を請け負う。顧客への成果物の納品が有る。 派遣契約は、上流工程を担える正社員が顧客と一緒になって要求仕様を策定する時に使います。なお、派遣契約は平メンバの場合です。マネジャー&リーダー級の場合は派遣契約ではなく出向という無名契約を結ぶことが多いです。 準委任契約は、開発が一段落した後、サポート工程などで正社員と派遣社員で構成された数人が顧客社屋のフロアの一角に残る際に使われます。 請負契約は、請負会社の正社員と派遣社員で構成された多人数が顧客社屋内の1フロアを借り切って実施するイメージです。下流工程が主です。 なお、上記のような契約&体制となるのは、派遣に入った上流工程メンバ策定の要求仕様を元に、別フロアか自社持帰りの請負メンバ(単価の安い派遣社員含む)が下流工程を担うという流れを実現するためです。ちなみに上記の「準委任契約」に別名として付けられたのが「SES(システムエンジニアリングサービス)」です。 *** 次に、中小ソフト開発会社の話に移ります。中小は大手と違い、顧客から直接仕事を受注することが少ないです。 そして、大手が受注した開発プロジェクトに要員を派遣して仕事をさせることを主業務とする企業が主流となっています。 よって仕事の受注は、請負契約ではなく、派遣契約というのが主たる受注の仕方となります。中小が行う派遣契約は、大手と違って主に上流ではなく下流工程の要員としての派遣です。 *** ところで、派遣契約と準委任契約の制約を比較してみましょう。 ・派遣契約:派遣先企業が派遣従業員への指揮命令権を持ち、労務管理にも責任を持つ。派遣社員を再派遣するのは法律で禁じられている。派遣前の事前面接は許される。 ・準委任契約:派遣先企業は労務管理にも責任を持たない。派遣社員を準委任で客先に送るのは法律違反ではない。契約前の事前面接は禁止される。 上記から、大手は上流工程以外の客先常駐の仕事の場合、基本的にSESと請負でしか受注しません。下流工程を派遣で請けてしまうと自社より単価の安い派遣社員が客先に送り込めないからです。大手にとってのSES契約の旨味は、「客先に単価が安い派遣社員を送ってよい」の1点に尽きます。 *** ちなみにこれだと、中小にはSESの旨味は無さそうです。にもかかわらず「SES」という言葉に「主に中小で行われる暗黒な営み」というイメージが漂うのは、2000年代に猛威を奮っていた「偽装SES」に起因します。 現在では人出し専門の中小企業は派遣でしか仕事を請けませんが、10年以上前はSESで請けるのが主流だったのです。 当時の中小は大手に対し、「人員を月に60万円でそちらに常駐させます。どれだけ残業させても料金は変わりません」という営業を行ったのです。 料金が変わらないことのからくりは、中小の経営者が社員に「あなた達は裁量労働の立場だから、残業代はコミコミだよ」みたいに言ってサービス残業をさせまくっていたからなのです。また、当時はSES契約では禁止のはずの契約前事前面接が「挨拶」と称して行われていました。 しかし、2010年代以降、偽装契約やサービス残業に対する世間の目が厳しく光り出したのと、そもそも長時間労働自体がいけないことだとされるようになったため、状況は一変しました。 大手と中小の間では、実態に即した派遣契約が結ばれるようになり、大手は自社で働く派遣社員の残業時間についてもきちんと管理し始めたのです。 また、大手が長時間残業をしなくなったため、そこで働く派遣社員も長時間労働が減りました。 *** よく知恵袋で「SESの立場で仕事するとやばいですか?」みたいな質問をする人が指しているのは10年前の「偽装SES」のことであると思われます。 ----------------------
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