鳩山由紀夫と邦夫の母である安子はブリヂストン創業者の長女です。久留米市は安子の生まれ故郷です。 ★「月刊 宝島」 2013年03月19日 “政界のゴッドマザー“「鳩山安子」の黒幕伝説!! ■ブリヂストン創業者の娘として知られる資産家 2月11日、鳩山由紀夫元首相の母、鳩山安子さんが都内の病院で死去した。90歳だった。 「安子さんは、民主党の“陰のオーナー”でした」と、葬儀に参列した元大手紙政治部記者が語る。 「夫の威一郎氏は元外相、夫の父は鳩山一郎元首相。そして2人の息子も政治家となった。 安子氏は戦後憲政史の語り部でもあり、存在そのものが伝説でした。大手新聞社でも彼女を 取材する機会はそうありませんでしたが、政治家を取り巻く環境が変化したいま、半世紀以上に わたって権力の大奥に行き続けるという女性は、もう出てこないように思います」 ■戦前、受験部屋に冷房があった実家 “政界のゴッドマザー”と呼ばれた鳩山安子さんは1922年、福岡県・久留米市生まれ。 ブリジストン創業者・石橋正二郎氏の長女として生まれた。教育熱心だった石橋氏は東京の高校(東京府立第二高等学校、現・都立竹早高校)を受験させるため、まだ小学校(現在の中学)に通っていた安子さんに家庭教師をつけると同時に、当時(1934年)としては極めて珍しかった「冷房」を安子さんの勉強部屋に設置させたほどだった。 石橋氏と鳩山一郎元首相の親交からお見合い話に発展し、安子さんと鳩山威一郎氏は戦前の1942年、帝国ホテルで結婚式を挙げる。安子さんが21歳、大蔵省の役人だった威一郎氏が25歳のときだった。 終戦の「玉音放送」を、安子さんは疎開先の軽井沢で聞いた。南洋のトラック諸島に出征していた威一郎氏が無事に帰宅した際、父である鳩山一郎が出迎え、抱きしめたシーンを、後に安子さんは「忘れられない」と語っている。 ■2人の息子をどう育てたか 大蔵省事務次官にまで登り詰めた夫の威一郎氏に対し「選挙に出てみたら」と強く勧めたのは安子さんと、田中角栄元首相だった。 1973年5月、田中角栄総理(当時)とゴルフに出かけた威一郎氏は帰ってくると安子夫人にこう告げたという。 「決めたよ」 安子さんはこう返した。 「ああ、お決めになったんですか・・・」 「そうだ」 こうして鳩山威一郎氏は政界に転身。福田内閣で外相をつとめ、安子さんは海外の要人夫妻と交流を深める毎日を送った。 由紀夫と邦夫、2人の息子は放任主義で育てた。 とはいっても、家庭教師、お手伝いさんのいる生活。 邦夫は家庭教師役の学生に蝶の生態を教えられ興味を持ち、その後、日本有数のコレクターとなった。 ともに東大に進学した由紀夫と邦夫は、祖父、父と同じ政治家の道を歩むことになる。 1986年の衆参同時選挙では、威一郎氏、由紀夫氏、邦夫氏がトリプル当選。 由紀夫氏の選挙区、北海道で、髪に積もる雪を払いながら安子さんは必死で応援演説を続けた。 このとき一家3人での出馬に反対した夫・威一郎氏をなだめ、弟に10年遅れて政界入りを決意した由紀夫を支えたのが安子さんだった。 日ごろ政治信条には口出ししない安子さんであったが、1996年の「住専国会」で国会が空転した際、当時新進党の邦夫氏に向かって、安子さんは強く言った。 「予算が決まらなければ、お困りになっている方がたくさんいらっしゃる。それをどうお考えですか」 邦夫氏はその後新進党を離れ、兄・由紀夫とともに民主党結党に合流する。 ■潤沢な資金力と資金提供問題 数十億円とも言われた新党結成資金--その資金源は、安子さんの保有する、ブリジストン株ほか莫大な資産だった。 政治キャリアが短かった鳩山由紀夫氏が急速に頭角を現し、やがて民主党政権 の初代総理に就任するのも、まさにこの「オーナー」の地位がモノを言ったからに他ならない。 民主党の前に由紀夫氏らが立ち上げた「新党さきがけ」も、その実質的オーナーは安子氏だった。 90年代後半から、安子さんはしばしば「政界のゴッドマザー」と呼ばれ、政権交代を狙う民主党の最大のスポンサーとして認知されていった。 後に問題となる「偽装献金疑惑」は、2002年ごろから、毎月1500万円の資金が安子さんから由紀夫氏と邦夫氏に渡っていたというもので、それとは別に、鳩山兄弟は安子さんから2011年までにそれぞれ約42億円の現金、株、不動産の贈与を受けていた。 その資金は、まさに4代にわたる鳩山ブランドの「力の源泉」でもあったが、この献金問題が民主党の基盤を危うくするところまで大きな騒ぎとなったとき、安子氏はプッツリと政治の世界との関わりを絶った。 冒頭の元記者が語る。 「いまでも、由紀夫さんはカラオケで『おふくろさん』を歌うよね。父であった威一郎さんは忙しすぎて家にいなかったし、ずっと反発していた。由紀夫氏に変わらぬ愛を注いでくれたのは母親の安子さんであって、これは議員を辞めたいまでも変わらぬ気持ちだと思いますよ」 ■いま浮上する巨額相続税問題 安子さんの死去で、鳩山兄弟に降りかかるひとつの難題は巨額の相続税だ。 安子さんは、父・石橋正二郎から相続した時価300億円以上のブリヂストン株や、文京区の一等地、音羽にある鳩山会館の土地など、少なくとも400億円以上の財産を保有していたと言われる。 生前贈与された分を除いても、由紀夫氏、邦夫氏が安子さんの遺産を相続するためにはそれぞれ50億円から60億円の税金を支払う必要があると見られ、そうなると一族の総資産は相当目減りすることになる。 政権を支えた巨額の資産はいま、逆に大きな負担となりつつあるのだ。 「4代にわたり日本の特権階級の象徴であり続けた鳩山一族ですが、由紀夫氏と邦夫氏の後の世代は、残念ながら日本を担う政治家としてのスケール感を持ち合わせていない。ゴッドマザーの死去が鳩山家のターニングポイントとなる可能性は十分に考えられます」(前出の元記者) 世に貧富の差はあれど、時代だけは何人にも公平に、容赦なく過ぎ去っていく。
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