就業規則の変更とその手続方法について

就業規則を変更して、手当をカットすることは可能ですか?

例えば、経営している会社の就業規則に、月額2万円までの通勤手当を支給すると記載している場合、この就業規則を変更して、通勤手当の条項をカットしてしまうことは可能なのでしょうか。

労働契約法上のルール

これについては、労働契約法9条、10条にルールが記されています。

(就業規則による労働契約の内容の変更)

第九条  使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。ただし、次条の場合は、この限りでない。

第十条  使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分については、第十二条に該当する場合を除き、この限りでない。

つまり、「変更後の就業規則を労働者に周知させ」、加えて「就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるとき」に限り、就業規則の変更による労働条件の変更がなされることとなります。
ですから、変更後の就業規則が労働者に「周知」されていない場合は、その変更後の就業規則は無効となります。

就業規則の変更

また、就業規則を変更するためには、労働組合や労働者代表者から意見の聞き取りをしたり、新たな就業規則を労働基準監督署に提出する必要があります。これらの手続きを欠いていたとしても即座に就業規則の変更が無効となるわけではありません。ただし、手続きがなされていないという事情も含めて、就業規則変更の合理性が判断されることとなります。

本件のように、これまで支給されていた通勤手当をカットするという就業規則の変更については、あえて通勤手当をカットしなければならない事情がない限り、合理的なものとは言えないため、認められないものと思われます。

この記事の執筆者

勝浦敦嗣弁護士

勝浦 敦嗣弁護士

弁護士法人勝浦総合法律事務所 代表弁護士。東京大学法学部卒業、2001年弁護士登録。大手企業法務事務所、司法過疎地での公設事務所勤務を経て、現在、東京と大阪で弁護士11名が所属する勝浦総合法律事務所にて、労働事件を中心に取り扱う。

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