会社は従業員の転勤を一方的に命令できる?

会社は従業員の転勤を一方的に命令できるのでしょうか?

多くの裁判例では、労働契約を結んだ際の状況から考えて、雇用者に配転命令権があると認められる場合には、労働者の同意がなくても転勤を命令することができるとされています。

同意を必要としない転勤命令

具体的には、会社の配転命令権が認められ、従業員は転勤命令に従う義務があるということになるでしょう。

  • 労働契約を締結した際に、転勤命令に従う旨の条項がある場合
  • 就業規則に転勤に関する規定が定められている場合

「会社は業務上の必要がある場合、配置転換を命じることができる」といったおおまかな定めであっても、配転命令権の根拠として認められることになります。

また、契約書や就業規則に転勤について明記されていなかったとしても、会社が全国展開をしており、支店への異動が予想でき、かつ、労働契約に、勤務場所を特定する合意がない場合にも、配転命令権が認められる可能性があります。

もっとも、配転命令権さえあればどのような配転命令も有効になるというわけではありません。配転命令が雇用主の権利濫用にあたる場合は、そのような命令が無効となる場合があります。具体的には以下のような点を検討していくことになります。

  • 配転を行う業務上の必要性
  • 人員選択の合理性
  • 嫌がらせ目的など、配転命令が他の不当な動機によるものでないか
  • 配転により、その労働者に与える不利益が甚大であるか

こういった観点から検討し、会社に抵抗姿勢を取った従業員へ報復目的での配転命令を無効とした裁判例(東京地裁H4.6.23)や、高齢で病気の母親と同居する従業員の大阪から福島への配転を無効とした裁判例(大阪地裁H9.10.14)、病気の労働者に対する京都から大阪への配転命令について無効とした裁判例(京都地裁H12.4.18)などがあります。

海外への転勤命令

また、同じ転勤といっても、海外への転勤については、さらに慎重に考えるべきでしょう。就業規則や労働契約において、明確に海外赴任の可能性があることが示されていない場合には、海外転勤についてまで、会社の一方的な命令権を認めるのは難しいかと思われます。

この記事の執筆者

勝浦敦嗣弁護士

勝浦 敦嗣弁護士

弁護士法人勝浦総合法律事務所 代表弁護士。東京大学法学部卒業、2001年弁護士登録。大手企業法務事務所、司法過疎地での公設事務所勤務を経て、現在、東京と大阪で弁護士11名が所属する勝浦総合法律事務所にて、労働事件を中心に取り扱う。

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