退職金はどんな場合に請求できる?
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退職金の法律上の位置づけ
退職金を請求する権利は、雇用主がその支給の条件を明確にして支払いを約束した場合に、初めて法的な権利として発生します。
就業規則、退職金規程、雇用契約などに退職金の支給条件が具体的に定められている場合には、当事者の合意に基づいて退職金の請求権が発生することになります。しかし、そのような具体的な合意がない場合には、いかに長期間勤務を継続したとしても、退職金を請求することはできないのです。
就業規則に「退職金については、別途定める基準に基づいて支払う」という定めがあるのに、肝心の退職金の基準が存在しない会社もあります。しかしながら、退職金請求権が法的な権利となるためには、退職金についての具体的な支給条件が定められている必要があります。具体的な支給条件や計算方法などが定められていない以上、このような場合には退職金は請求できないこととなってしまいます。
慣行に基づく退職金請求
もっとも、就業規則や退職金規程で退職金の支給条件が定められていない場合でも、これまで退職者に一定の退職金が支払われてきた実情がある場合には、例外的に、慣例に基づく退職金請求が認められるケースもあります。このような慣例のことを「労使慣行」といいます。
労使慣行が存在すると認められる条件としては、以下の3つが必要となります。
- 労使慣行が長期間にわたって反復継続していること
- 該当する労使慣行に対し、労働者と雇用主の双方がはっきりと異議を唱えていないこと
- 該当する労使慣行が労働者と雇用主の双方に、特に雇用主側で該当する労働条件について決定権または裁量権を持つ者に、一定のルールとして認識されていること
これまでほとんどの退職者に一定の条件に従って退職金が支払われ続け、会社側も退職者には退職金を支払わなければならないという認識を持っていたとします。この場合には、特定の退職者のみに合理的な理由もなく退職金を支給しないということが許されず、退職金請求権が認められる場合もあります。
逆に、これまでも退職金が支払われなかった退職者が存在し、また、支給される場合の基準についても明確なものがなく、経営者の裁量に任されていたとします。このような場合には、具体的な退職金の支払いについての労使慣行があったとまでは言えないでしょう。
就職にあたって
退職金の有無や支給条件などは自由に定めることができますので、会社によって、その有無や内容は大きく異なります。退職金の条件については、労働条件通知書の記載事項ですので(労働基準法施行規則5条)、就職する際には退職金の有無や支払いの条件を確認しておきましょう。