フレックスタイムについて
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働き方改革関連法で何がどう変わったのか?
改正法の施行前は、フレックスタイムの清算期間の最大は1カ月でした。改正法では、清算期間は最大3カ月までとなります。
もっとも、清算期間が延びると「偏り」も大きくなります。そのため、3カ月の最初の方であまり働かなかった労働者は、後半に長時間労働を余儀なくされる可能性が出てきます。このようなことにならないように、清算期間が1カ月を超える場合はその期間を1カ月ごとに区分し、その期間内を平均して1週間当たりの労働時間が50時間を超えないこととされました。また、使用者は対象労働者に各月の労働時間数の実績を通知することが望ましいとされました。
問題は残業代の計算
フレックスタイム制でも残業代は発生します。1カ月単位であれば、1カ月の総労働時間から法定労働時間を引いて算出すれば残業代は簡単に計算できました。
例えば、総労働時間190時間の場合、法定労働時間が177.14時間(暦日31日の場合)となれば、計算式は
190 - 177.14 = 12.86時間
となり、12.86時間に見合った割増賃金を払えばよかったのです。しかし、1カ月を超える場合は、複雑になります。
清算期間3カ月の場合
まず、清算期間を1カ月ごとに区分し、週50時間超の場合を算出します。たとえば、ある月において総労働時間230時間、暦日31日として、週50時間を月換算すると221.43時間となります(=31÷7×50)。したがって、計算式は、
230 - 221.43 = 8.57時間
となり、とりあえず、この月は8.57時間の残業代を払う必要があることになります。
次の月は、総労働時間180時間だったとします。暦日28日とすると、200時間が週50時間の月換算労働時間となります。そうすると、計算式は180-200となり0を下回るので、この月は残業代を払わないでOKとなります。さらにその次の月は総労働時間170時間だったとします。暦日31日とすると、221.43が週50時間の月換算の労働時間となります。したがって、計算式は170-221.43となり、やはり0を下回るので、残業代なしとなります。しかし、最後の月は清算期間の最終月なので、最終の残業代を計算する必要があります。この場合、清算期間全体の法定労働時間から、全体の残業時間を引いて、さらに、そこから既払い分の残業時間を引くことになります。
計算式の例(清算期間3カ月)
【総労働時間と月間法定労働時間】
1カ月目:230時間(暦日31日:177.14時間)
2カ月目:180時間(暦日28日:160時間)
3カ月目:170時間(暦日31日:177.14時間)
計算式 (230 + 180 + 170)-(177.14 + 160 + 177.14)= 580 - 514.28 = 65.72時間
ここから、既払いの最初の8.57を引くと、
65.72 - 8.57 = 57.15時間
57.15時間の残業代(割増賃金)を払うことになります。もし時間単価2,000円の労働者であった場合は、14万円ほどとなります。
以上のようにかなり面倒な計算になります。これに、60時間超の残業代が50%割り増しになるということが合わさると、もっと複雑なものとなります。