労働時間把握義務について

働き方改革関連法で何がどう変わったのか?

これまでも労働基準法は、使用者に対し賃金台帳の調整・記入義務を課し(労基法108条)、賃金台帳には労働時間数等を記入することが義務付けられてきました(労基則54条1項5号)。したがって、使用者には労働時間を正しく把握し、正しく賃金を支払う義務があると解釈されてきました。ただ、これまで使用者の労働時間把握義務が条文上明確に規定されていたわけではありませんでした。

今回の法改正では、使用者は、医師による面接指導を実施するために、厚生労働省令で定める方法により労働者の労働時間の状況を把握しなければならないとされました(労安法 66条の8の3)。これによって、使用者による労働時間把握義務が法律上明文化されました。

具体的な時間把握の方法については、「タイムカードによる記録、パーソナルコンピュータ等の電子計算機の使用時間の記録等の客観的な方法その他の適切な方法」によるものとされています(労働安全衛生規則52条の7の3)。

問題となりやすい自己申告制については、やむを得ず客観的な方法により把握し難い場合には可能とされていますが、現在のように情報機器が発展している中で、なかなかそういう場合が生じることは考え難いものと言えます。通達でも、事業場外から社内システム事業場外において行う業務に直行又は直帰する場合などにおいても、たとえば「事業場外から社内システムにアクセスすることが可能であり、客観的な方法による労働時間の状況を把握できる場合もあるため、直行又は直帰であることのみを理由として、自己申告により労働時間の状況を把握することは、認められない 」としており、また「タイムカードによる出退勤時刻や入退室時刻の記録やパーソナルコンピュータの使用時間の記録などのデータを有する場合や事業者の現認により当該労働者の労働時間を把握できる場合にもかかわらず、自己申告による把握のみにより労働時間の状況を把握することは、認められない」としています。(平成30年12月28日基発1228号第16号通達)

この労働時間の客観的把握義務の対象となる労働者は、高度プロフェッショナル制度適用労働者を除き

  1. 研究開発業務従事者

  2. 事業場外労働のみなし労働時間制の適用者

  3. 裁量労働制の適用者

  4. 管理監督者等

  5. 派遣労働者

  6. 短時間労働者

  7. 有期契約労働者

を含めた全ての労働者となります。

この記事の執筆者

佐々木亮弁護士

佐々木 亮弁護士

東京弁護士会弁護士。旬報法律事務所所属。日本労働弁護団常任幹事。ブラック企業被害対策弁護団代表。ブラック企業大賞実行委員。首都圏青年ユニオン顧問弁護団。民事事件を中心に取り扱う。また、労働事件は労働者側・労働組合側の立場で事件を取り扱う。

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