まずは根本的なところから…… なぜ『警視庁』は『東京都警察本部』と言わないのか。それは他の道府県とは違い、東京都には政府や各省庁の重要施設が集まる上に、天皇(皇居)が存在する為、それを守る為の特別な『任務』『事務』『権利』が付与されているので、東京都の警察は他の警察本部とは違う事を表すために『警視庁』という名称がつけられたのです。 名称に使われている『庁』とは単に行政機関を表す言葉であり、意味としては『省』も『庁』も同じです。もちろん『部(本部)』『府』『局』『委員会』も一緒です。ただし『府』は政庁、『省』は国の行政機関、『局』は官庁の内部部局や外局、『庁』は府または省の外局・特別の機関・地方公共団体の内部組織で局より規模の大きいものに付けられます。 よって“東京都の警察本部”は地方公共団体の組織の一つであり、政庁でも国の行政機関でもないので『府』や『省』は付けられませんので、残る『局』か『庁』か『部(本部)』が使われますが、本部よりは業務も権利も規模も大きいですし、当然局よりも規模が大きいので『庁』が使われ、『警視庁』となったのです。 一方、海上保安庁や金融庁に『庁』が使われるのは、それぞれ国土交通省と内閣府の外局だから『庁』が名称に付けられたのです。同じ『庁』でも、経緯が違うのです。 ※日本警察は国家警察として知られていますが、それは業務や事務を統一して効率化・警察官の意思統一図るためで、『警察行政』のみを国家として『国家公安委員会』『警察庁』が執り行うようになっていますが、警察に強大な力を与えないようにするために予算や実際の運営面では地方公共団体である都道府県が行うようにしているので、厳密に言えば『半国家・半地方警察』となります。 次に『防衛』と『警察』が分かれている理由ですが、それは日本が『軍事国家』ではないからです。日本で言う『防衛』とは防衛省や自衛隊が執り行い、これらは『軍事』に値しますが、警察業務とは本来国民に対して行うものですよね?軍事力で犯罪者(国民)を取り締まる国家のことをつまり『軍事国家』といいます。そして日本は軍事国家を目指していないので、外からの敵(他国等)に対応するのは『防衛省・自衛隊(軍民)』、内なる敵(国民)に対応するのは『文民警察(警察や海保)』と、分けているのです。 『警察』と『海上保安庁』が分かれている理由ですが、これも簡単です。業務が多すぎるのと陸の常識と海の常識は違うからです。もちろん、警察は海での警察権利も持っていますが、領海警備業務をも警察の範疇(主任務)にしてしまうと、全ての警察官には異動の義務が課せられるので、全ての警察官に対して陸だけでなく海での知識・技術・国際慣習も教育しなければいけません。 陸と海では適用される法律も違えば、逮捕術も捜査手法も取り締まり方法もそれに伴う事務も違ってきますし、船舶運用の技術も必要となり、一人の警察官にそれら全てを覚えさせるのは無理に等しいですし、非常に無駄ですよね?だから、海のプロとして『海上保安庁』という組織を別に設けているのです。陸は陸、海は海、餅は餅屋という事です。 >同じような業務だから~ あくまでも付与される『権利(警察権)』が一緒なだけであって、実際の『業務』は全くの別物ものです。もちろん軍事力である防衛省が管轄するのも論外です。軍事組織が国民を取り締まったら恐怖政治の始まりですし、海上では様々な国の人も大勢います。それらの人々を自衛隊が取り締まるようになれば、他国は自国民を守る為に対話や警察力ではなく、軍事力(軍隊)を出さざるを得なくなります。 平和国家を目指しているから『軍民』と『文民』をきっちり分けて、陸と海では常識が違うから『警察』と『海保』に分けているのです。 最後に警察の執行隊として『高速隊』『鉄道警察隊』が存在している理由ですが、これももちろん上述の『餅屋理論』と一緒です。高速道路では一般道路での取り締まり方法は通用しませんし、専用の装備が必要となります。鉄道施設内でも特有の犯罪が横行しているので取り締まり方法は変わります。それぞれ専門性が高い業務だから、分けているのです。 例えば一般道路で交通取り締まりをしている『交通課』の警察官に、高速道路で規制を張れ、事故処理をしろと言っても道具も無ければ危ないですよね? 例えば、交番にいる警察官に、痴漢を取り締まってくださいとお願いしても、制服を着ているのですぐ痴漢にバレて取り締まりになりませんよね? 例えば、駅施設内で刃物を持った人間がいても、痴漢等取り締まりを行うために制服も着ていなければ武器も持っていない鉄道警察隊が出動しても意味がないでしょ? 陸と海で『警察』と『海保』が分けられているのと同じで、実際の業務が違うのでそれぞれに特化した『執行隊』を設けているのです。組織として分けていないのは、それぞれの活動範囲・業務範囲が小さすぎるから、警察の業務となっているのです。
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