警察組織は警察庁長官をトップとする官僚組織なのに、下級警察官は都道府県警察が採用するのはなぜですか？自衛官は下士官でも国の防衛省、自衛隊が採用します。警察官も国家警察のほうがいいのではないですか？

日本の警察は、国家機関である「警察庁」と、自治体の機関である「都道府県警察」に別れています。 この理由は、戦前の特高警察を反省しているからです。戦前は、「内務省警保局」が全国の警察を統括し、傘下である都道府県警察部に命令を下していました。内務省警保局は、特別高等警察を使って共産主義者、天皇制廃止論者、無政府主義者などを弾圧しました。治安維持法を制定し、罪を犯していなくても思想が犯罪とされ、拷問による死者も発生しました。太平洋戦争に入ると、反戦主義者、平和主義者も非国民だとされ、特高警察に身柄を拘束されました。このようにして、戦前の警察は政府に都合の悪い人間を弾圧する組織として活動していました。 終戦後、GHQによって内務省が解体され、警保局も都道府県警察部も廃止されました。その後は国家警察である「国家地方警察」と、自治体警察である「市町村警察」がそれぞれ設置されましたが、管轄争いや業務の非効率を招いたことから、1954年に新・警察法が施行され、現在の警察庁・都道府県警察が誕生しました。 日本では、戦前の特高警察に対する敵対心、恐怖心から、中央集権的な警察制度を忌避する傾向にあります。ですが、市町村ごとに警察を設置していると面積が小さすぎて非効率だし、管轄争いが発生しやすく、小規模自治体では警察予算も確保できません。 以上のことから、国家機関である警察庁は逮捕権・捜査権を持たず、あくまでも事務を担当し、実際の治安維持は都道府県警察が担当する、という妥協に妥協を重ねた日本独自の警察制度になりました。 ですが、時代は常に動いています。国際犯罪、テロ、サイバー犯罪などが渦巻く情勢において、管轄が異なる警察組織を設置しても意味がありません。「国家警察の復活」も個人的には賛成したいのですが、「特高警察の復活」だと勘違いされないような具体的な権力暴走防止策は考慮すべきです。