株式会社ココナラに聞いてみた ビジョン・ミッションへの共感を大事にする「バリュー評価」とは

更新日:2024年9月26日

株式会社ココナラに聞いてみた ビジョン・ミッションへの共感を大事にする「バリュー評価」とは

転職先の企業を選ぶ際に「働きがいがあるか」を重要視する方も多いのではないでしょうか。企業の掲げるビジョンに共感できるかどうかは、転職先を決める大きな基軸になります。今回は、ビジョンへの共感を大切する組織マネジメントに取り組む、株式会社ココナラの最高人事責任者(CHRO)佐藤邦彦さんにお話を伺いました。

個人のスキルを売り買いできるスキルマーケット「ココナラ」を運営する、株式会社ココナラ

ー 株式会社ココナラとはどのような会社なのでしょうか?

株式会社ココナラは、個人の知識・スキル・経験をオンラインで売り買いできるマーケットプレイスとして、「ココナラ」というサービスを運営しています。

会員登録数は、2021年11月現在で262万人となっています。デザイン、イラスト、webや動画制作といったビジネスで利用するものから、占い、ファッション相談、語学レッスンなどプライベートで利用するものまで450種類以上の商材があり、弊社ではこれらをカテゴリと呼んでおります。

いろいろなものが無形財として売り買いできる、困ったときはココナラにくればなんでもそろう、というようなプロダクトを展開しています。

ー ココナラというと似顔絵だったりとか、イラストだったりが多いイメージですが、個人のユーザーが多いのでしょうか。

個人でプライベートの利用が中心だったココナラも、直近では法人様のビジネス利用カテゴリの方が、売り上げシェアでは大きくなってきています。もともとのCtoCのサービスマーケットプレイスという形は変わっていませんが、そういったニーズに応える形で、ビジネス利用をしていただけるように弊社も注力しています。

ー 法人のビジネス利用も増えているのですね。

昨年の8月には、ココナラビジネスというプロダクトをローンチしました。ココナラビジネスでは、ビジネス向けに特化した購入専用のプラットフォームで、ココナラの使い勝手やUXはそのままに、ビジネス利用に特化した専門家/カテゴリのラインナップ・機能・サポートを提供しています。

デザイン、webサイト制作、ビジネス代行、ITプログラミング、マーケティング・web集客といったサービスカテゴリを230種類以上そろえています。また、見積書・発注書・納品書・請求書・領収書といった帳票が発行できる機能など、法人様特有の機能を充実させています。現在、ココナラビジネスの登録社数は累計14,000社を突破しました。

地方の企業様ですと、人材リソースが足りなかったり、遠隔地のため、時間と場所の概念に縛られてしまったりという課題があると思います。弊社は、すべてオンラインでやりとりできるコンセプトがありますので、時間と場所の制約を超えて、法人様が実現したい事業戦略に、ココナラビジネスを活用いただけたらと考えています。

ー toC、toBに関わらず個人のスキルに価値を置いていらっしゃるように感じました。

まさしくプラットフォームとしてCtoCのビジネスを継続しているという点では、「これからの世の中を捉えたときに、国や共同体や社会といった大きなプレイヤーがルールを作って、その中で個人が従属する形ではなくて、これから先は個人が主体の時代になる」という創業者の想いがあります。

一方で、個人側に立ってみたときに、自分自身の好きなことや得意なことが、誰かの役に立つ、ということを知らない人が多いと感じています。

ココナラは、そうした個人の人生の選択肢を拡張するための機会を作っているサービスです。その意味で、役務提供先が個人でもビジネスユーザーでも、創業時から変わらず”個人”に焦点を当てたサービスを展開しています。

株式会社ココナラのビジョン、ミッション
株式会社ココナラのビジョン、ミッション

ー ココナラのサービスの軸が、「一人ひとりが自分のストーリーを生きていく」という会社のビジョンにも現れているのでしょうか。

そうですね。会社のビジョンとともに「個人の知識・スキル・経験を可視化し、必要とするすべての人に結びつけ、個人をエンパワーメントするプラットフォームを提供する」というミッションを掲げています。このビジョン・ミッションへの共感は、組織のマネジメントの起点にもなっています。

自社のビジョンへの共感を大切にした人材マネジメントとは?

ー 具体的には、どのような人材マネジメントを行っているのでしょうか。

弊社は「ミッション実現のために集まったプロジェクトチームである」という考え方をしています。だからこそ、ミッション実現に向けて今期の中で取り組むべき優先順位の高いテーマは何かを、”全社ミッション”として明示的に可視化しています。いち社員であっても、役員を含めた全社員がどんなミッションに取組んでいるのかをオープンに閲覧できます。その全社ミッションを分解していったときに、社員個人のミッションに繋がっていくような組織マネジメントの仕組みを取り入れています。

言い換えると、社員の一人ひとりが「自分がやっている仕事は全社ミッションに繋がっている」ことを実感できるような取組みということです。弊社は半期で評価サイクルを回していますが、この半期の期初のタイミングでミッションシートというものを作成しています。その中でミッションを具体的に落とし込みます。

このミッションシートを活用して、 上長とメンバーが個人のWill(どうしていきたいのか)と、今期取り組むべき会社のミッションを繋げるための面談をすることで、納得感や目的意識を醸成してから期をスタートする取り組みです。

また、育成の取り組みとして「人材育成委員会」というものを実施しています。そこでは、 社員個人のWillを起点に、会社として次のキャリアのために、どのような場を提供できるのかをディスカッションしています。社員の上長に加えて、横串の組織長も参加し、横断的な視点で個人のキャリアの可能性を考えていけるような工夫をしています。

ビジョンへの共感、ミッション実現のための行動を評価する「バリュー評価」

ー ビジョン・ミッションへの共感を大切にされているということですが、その共感度はどのように把握するのでしょうか?

弊社では、少し特殊な制度として「バリュー評価制度」を採用しています。どんな評価制度かというと、ビジョン・ミッションを実現するために「何を大事にして行動すればいいのか」という行動やスタンスをバリューとして言語化し、これを評価に組み込んでいます。個人の成果に加えて、バリューがどうだったのかを振り返り、成果とバリューを50:50に評価しています。

例えば、当該期間の成果が惜しくも及第点に届かなかった方でも、バリューの体現レベルが高い方は総合評価プラスになるということになります。バリューの体現レベルが高い方は持続的な価値を発揮していただける。言い換えれば、正しい行動ができる人は成果創出が期待できるという考え方に則っています。

実は今日、上半期の表彰の場がありました。毎回感動してしまうのですが、全社員がオンライン上に集まり、最も成果を挙げた人に贈られるMVPや、バリューの体現度合いが高くみんなに学びのある行動ができた人に贈られるバリュー賞を表彰して、表彰者がコメントするというような機会です。そういった機会が、結果的に組織のエンゲージメントに良い影響をもたらしています。

社員のエンゲージメントについては、モチベーションクラウドというスコアが出るサーベイを利用しています。このサーベイのなかで、ココナラの会社としての強みが10個ほど出てきますが、その中でも特に、ビジョン・ミッションへの共感や事業内容の社会的意義というところを会社の強みとして認識している社員が多いのです。

そこが組織としても現れるので、採用においても共感採用ということで、このビジョン・ミッションへの共感を起点として採用広報をして、面接の中でもそこを確認する、というようなサイクルにしています。

パーパスを起点とした人事組織マネジメントシステム
パーパスを起点とした人事組織マネジメントシステム

ー 定量での評価が難しいスタンスやバリュー評価ですが、評価を受ける側が納得できる仕組みなのでしょうか。

まさしく、この行動という定性的な評価を、報酬に反映させるような制度に入れることは結構タブーといいますか、非常に難しい部分だと思います。そのため、導入のタイミングでも多くの議論がありました。弊社でも、やりながら改善していき、1年半ぐらい回して形になってきたところです。

運用しながらアップデートしてきた中で、工夫している点が3点あります。

1点目は、期初にどんなバリュー体現で貢献していきたいか?をイメージする機会をつくることです。自分はどのバリューにフォーカスをして、今期頑張っていきたいということを社員自らが宣言し、上長はバリューの体現を実現させるためにどんな機会提供ができるか?を思考し、具体的にどんなシーンでこういう行動ができたらOKだよね、という体現イメージをすり合わせます。評価という意味では、実現確率を高めることや、振り返って後出しジャンケンにならないよう納得感を醸成する効果に繋がります。

2点目は、振り返り時に自身のバリュー発揮エピソードを伝える場があることです。バリュー評価は3ヵ月サイクルで振り返り、評価を行います。上長が見えている範囲で一方的に評価をするのではなく、メンバー自身が頑張ったと誇れるエピソードを伝えることで、具体的な行動・スタンスの振り返りの機会をつくるようにしています。

3点目は、評価会議における複眼的な意見の取り入れです。当たり前ですが、人が評価をする以上、そこに正解はありません。どこまでフェアで納得できる評価、フィードバックに変えていけるか?を工夫するために、メンバーの評価会議には、直属の上長に加えて他組織長も参加するようにしています。

ともすれば、上長に気に入られるために行動を変えてしまう、上長が無言の権威・権限を振りかざすことを抑制するための工夫ポイントです。

ー 人事評価の50%がバリュー評価。この制度を取り入れてみての効果はいかがでしょうか。

バリューに対して、会話をする機会が増えました。弊社は2022年3月現在、160人ほどの組織になっていますが、そのうち過半数はコロナ禍に入社しています。そうすると対面で関係性を築くのが難しい、ココナラらしさを感じづらい、といった組織適応が大きな課題でした。

その中でも「うちの会社ってこうだよね」ということが言語化されて共通認識となる、もしくはズレてしまってもバリューに戻る会話がなされるのは、このバリュー評価制度が1つの仕掛けになっていると感じています。

また、健全なルールや仕組みの中でしっかりとバリューについてフィードバックをすることで、改善できたら評価が上がるし、もしバリューに則していない行動があったら評価が下がってしまうことで、バリューの体現レベルが上がる、体現する人が増えていくのは良い効果だと思っています。

働きがいにフォーカスした職場環境、育成制度は?

ー 働く環境についても教えていただけますか?

働き方の制度そのもので言うと、フレックスタイム制があったりとか、リモートワークができたりとか、副業も可能です。ココナラに出品して副業しているという社員も多くいます。

制度設計の思想は、常に戦略的に”働きがい”という点にフォーカスしているので、ビジョン・ミッション実現のために働く環境をどうやって整えると、社員のパフォーマンスが上がるのか、やりがいがあると思ってもらえるのかという観点を大切にしています。

ー 働きがいを求めて入社された方への育成制度などはあるのでしょうか?

新入社員のオンボーディングは非常に注力しているテーマです。オンボーディングで失敗すると、1年以内の離職率が7割を超えるという調査結果もありますが、弊社の特徴としては、大きく2つあります。

1つ目は、中途採用で入社された方に向けて、月次ごとに実施される3日間のオンボーディングプログラムです。
1日目は、社長、会長からビジョン・ミッションに込めた想いや事業戦略について、トップ自らが社員に話します。また、人事労務系の働くうえで知っておかなければならないことを担当者からしっかり伝えています。
2日目は、各部門長が15分ぐらいのピッチで「自分たちはこういう組織でこの目的のために、こんな仕事しています、仲間はこういう人がいます」というのをお伝えしています。組織に適応する上では、誰に何を聞くと良いのか?が予めわかっているかどうかが重要だからです。
3日目は、実際にココナラで売り買いするセッションがあります。どの部門の社員でも「このプロダクトによって、ビジョン・ミッションを実現したい」というメッセージに実感値を持ってもらうために実施しています。

2つ目は、新入社員の方に対する取り組みとして、1ヵ月、3ヵ月、6ヵ月の面談をセットしています。
1ヵ月面談は入社して間もないタイミングなので、採用担当が、入社前と入社後でギャップはないかなということで人事面談を行なっています。
3ヵ月面談は会社全体の観点として慣れてきた頃なので、人事責任者として私と人事企画の責任者が全員と面談をしています。
6ヵ月のタイミングは、創業者の南が新入社員に面談を行います。仕事もいろいろわかってきたなかで、改めて感じる課題や悩みがないか、ということを確認しています。

ー 企業としての今後の展望について教えてください。

弊社は2021年の3月にIPOをしたのですが、上場したら終わりではなく、ビジョン・ミッションの実現に向けて、更なるアクセルを踏んでいきたいと考えています。

「すべてがそろうサービスマーケットプレイス」を作ろうということで、困ったときにココナラに来たら何でもあるという状態を、どれだけクオリティ高くかつバラエティー豊かにやっていけるかをテーマにプロダクト開発をおこなっています。

その中でも足元でチャレンジしているテーマは、ココナラのビジネス利用の拡大というところですね。CMを中心に認知度を高めていくような施策は常に打っていますが、認知のされ方としては、やはりこれまでのココナラのプライベート利用、CtoCサービスというイメージが強く、ココナラをビジネスで利用するイメージを持っていただけていないと感じます。

ただ、実態としては多くの大手企業様にも利用いただいております。よりビジネス利用での認知のされ方をPRしながら、いろいろな企業様に使っていただけるように強化していきたいと思っています。

佐藤さんのインタビュー
佐藤さんのインタビュー

ー 最後に、読者に向けたメッセージがあればお願いします。

弊社は、ビジョン・ミッションを実現するために集まったプロジェクトチームであり、これまでもこれからも、ビジョン・ミッション実現のために、というところは変わらないので、我々のビジョン・ミッションに共感していただける方に、まずはジョインしていただきたいなと思っています。

10年かけてマーケットを作ってきましたが、マーケットリーダーだからこそ直面する課題は尽きません。これから日本において、すべてがそろうサービスマーケットプレイスを作り、ビジョン・ミッションを実現するためにはチャレンジングの連続だと思っています。

「自分だったらこうしたい」といった自分なりのオーナーシップをもった方がいらっしゃったら、ぜひ一緒に働きたいと思っています。

興味をお持ちになった方は、採用ホームページをご覧になってください。