副業人材をスピーディに採用する地域中小企業の取り組み

更新日:2024年9月26日

副業人材をスピーディに採用する地域中小企業の取り組み

2018年、厚生労働省がモデル就業規則から「副業・兼業」を禁止する規則を削除したことで、副業解禁をする大手企業も増えました。多様な働き方が選べるようになった昨今、平日は本業、週末は副業というスタイルを選ぶ人も多いのではないでしょうか。今回は、都市部の副業人材と地域中小企業つなぐ株式会社JOINSの代表取締役 猪尾愛隆さんに副業人材の魅力を伺いました。

地域中小企業の副業案件が見つかるマッチングサービス「JOINS」

ー まずは「JOINS」について詳しく教えてください。

JOINSは、地方の中小企業に特化した副業・兼業人材のマッチングサービスです。オンライン・リモートワークが可能な案件を中心に、東京以外の地域中小企業の副業案件を紹介しています。2017年6月に会社を創業し、そこから2年ほどは長野県にエリアを絞って、事業としての重要な検証をしつつ、実績を積み上げました。

2020年の1月にプロダクトとしてJOINSをローンチしました。「働くことをもっとしなやかに」をコンセプトに、場所や時間、所属といったものに縛られない働き方の推進に取り組んでいます。また、JOINSでは地域中小企業人手不足の問題をデジタル化によって解決していきたいと考えています。人手不足に対する解決策として、都市部のリモートワークで働く副業・兼業のプロ人材と地域中小企業のマッチングにフォーカスしています。

株式会社JOINSのサービス説明
株式会社JOINSのサービス説明

地域中小企業の都市部で働く人材、それぞれの価値観や文化の違いも

ー 地域中小企業と都市部で働く人材には、価値観や文化の違いもあったのではないでしょうか?

そうですね。文化や価値観もそうですが、職種ベースや、スキルベースでも大企業と中小企業、都市部と地方での認識の違いがあると思います。業務自体も違っていたりするのでJOINSでは、いわゆる求人票のような形ではなく、課題単位での案件マッチングを重視しています。具体的には「こういうことやってほしいです」という課題を明確にお伝えして、それを解決できるスキルを持っている方が応募するというスタイルですね。

地方の中小企業の場合、人材不足や業務経験者がいないという点で、まだまだやれることが多いと感じています。副業を探している方にとっては、大企業やスタートアップ、IT企業などで、経験したことがあるような課題が多いと思います。インサイドセールスや、マーケティングのDX化など都市部の企業では、すでに取り組んでいるようなことを、地域の中小企業で再現いただくような案件が中心です。

地域中小企業が先に必要としているのは、資金よりも人材

ー 地域中小企業の副業人材に着目したきっかけを教えてください。

前職で、地域中小企業の経営者と会話する機会が多くありました。その中で、地域中小企業の人材不足が想像以上に深刻だと感じました。長い歴史を持つ貴重な技術や、次の世代に残したい素晴らしい商品、サービスがたくさんありましたが、それらを継続させる経験やスキルを持った人が社内に不足している。地域中小企業が先に必要としているのは、資金よりも人材だと確信したのがきっかけです。

また、国の政策としても地方の人材不足を解消していくために大きな予算を使っていたことが事業化への追い風となりました。実は国の取り組みとして、全国にプロフェッショナル人材戦略拠点というものがあり、地域で働く人を増やそうという動きが大きくなっています。弊社でも、このプロフェッショナル人材戦略拠点が持っている求人情報をデータベースとしてシェアしていただき、リード企業を発掘しています。また、企業だけではなく地方の金融機関も、ゼロ金利やマイナス金利の影響を受けていて、融資だけでの経営が難しい状況です。

金融機関は地方には欠かせない大事な役目を担っているので、金融事業の次の事業の柱として、国も補助金などを通じて、人材事業の立ち上げを支援しています。融資事業と人材事業はとても相性が良く、関係性も深いので。金融機関は融資した資金を回収するために、融資先に成長してもらう必要がありますよね。そこで優秀な人材を融資先に紹介する、と。これは企業側のメリットも大きいと思っています。弊社は、地方の金融機関と提携しており、全国40以上の地方銀行様とともに、地方の人材事業活性化に取り組んでいます。

副業人材活用のメリットは「優秀な人材をスピーディーに採用できること」

ー 場所や時間、雇用に縛られない副業人材の魅力はどんなところですか?

そうですね。まず、企業側のメリットとしては、圧倒的に優秀な人たちをスピーディーに採用できることです。他社では社長やマネージャークラスで活躍される方たちが、プレーヤーとして採用できます。多様なキャリアを持っていたり、他業種の知見を持っていたり、圧倒的に優秀な人たちをすごくスピーディーに採用できることが大きなメリットです。フルタイムで採用しようと思ったら難しいな、という人材が副業人材には多いですね。時間や場所の制約を取り払うことで、採用のしやすさは大きく変わります。実際に、弊社内でもメンバーは全国に散らばっていますし、海外在住の者もいます。

ー 社内メンバーが全国にいらっしゃるとのことですが、みなさんフルリモートなのでしょうか?

弊社は、コロナ禍以前から完全フルリモートですね。組織に属しているから、雇用契約の関係にあるから、出社する、しない、といったことに縛られずに、副業人材もチームとして一緒に働ける組織が、もっと世の中に普及することを目指しています。これを実現するために、弊社も副業人材としてチームで働くことを意識的に実践しています。私自身もそうですが、メンバーの多くが弊社での業務に加えて副業をおこなっています。そうすると、地域中小企業に伝えるノウハウも溜まりますし、まずは自分たちで実践することで得られる信用もあると思っています。

一方で、フルリモートだからこその大変なこともたくさんありますね。メンバーが50名を超えてきたのですが。この40〜50人ほどの組織になってきたあたりで色々と課題が出てきたように感じます。リモートである以上、個々が裁量を持って仕事をしているので、どうしても個別最適になりがちです。組織としては、全体最適のバランスをとる人が必要だなと感じています。ここは一定の稼働時間を取って、現場を見てみないと全体最適が何かを見極められなくなってきます。特にこのあたりは人数に起因してくると感じています。よくある会社組織の30人の壁、50人の壁といわれるものと近しい話ですね。

ー 今後、副業を認める企業も増え、JOINSのニーズは大きくなるのではと感じています。事業としての展望はありますか?

地方の中小企業において、会社の組織のメンバーの2〜3割が副業プロ人材、常に副業人材が出入りしている状態、というのが当たり前になっているといいなと思っています。30人ほどの会社だったら、6人から10人くらいですね。さらにいうと、テクノロジーの進化が背景にあって、大都市一局集中という社会課題の解決にグッと進めそうなタイミングでもあると思っています。

この社会課題に対して、テクノロジーを活用してしっかりとビジネスで解決していきたいという想いがありますね。副業人材を雇う市場そのものを、メインストリームのキャズムを超えた市場にすることが弊社のミッションだと考えています。派遣市場など、30年前とかにはあまりなかった市場が、今は普通に定着しているじゃないですか。そういうイメージで、同じように副業人材も中小企業にとって普通の市場にまで拡大することが展望です。

テクノロジーの進化の波と、労働人口の減少というのは、この事業の後押しとなっている実感があります。市場をリードしていく企業としてJOINSがあったから、この市場が加速したといわれるように在りたいですね。事業拡大のタイミングですので、弊社でも積極的に人を採用していきたいと思っています。

ー 採用も積極的におこなっているとのことですが、JOINSが求めるのはどんな人材ですか?

まず、ひとつ大事にしているのが地域に根ざした暮らしといいますが、地方ならではの泥臭さみたいなものを大切に感じてくれる人、ですね。好きな土地で暮らす豊かな人、働き方を増やすためにテクノロジーを使いたい、というような価値観を持った方が合うのかなと感じています。

ー 最後に読者の方にメッセージをお願いします。

地方のローカルな価値観が好き、ローカル×テクノロジーの世界観で仕事に一緒に関わりたい、と思ってくださる方がいらっしゃれば、ぜひJOINSに登録してみてください。募集中の案件のほか、非公開の案件も扱っています。弊社での採用情報はもちろん、JOINSで公開している案件もぜひ、ご覧いただけたらと思います。